non title
「…抱き方が気に入らねぇんだよ」
シーツの波間から、ぼそっとつぶやきが聞こえた。
充実した時の余韻にひたる様子もなく、なぜか、
不満気な顔をしている彼に問い質すとこうである。
意外な言葉に男は目をすがめる。
何が気に入らないと言うのか…
週末の夜、外で夕食をとった後、当然のように一夜を共にした。
明日には帰らなければならないという彼の言葉を受けて、
痕を残さないようにと、それこそ壊れものを扱うように、
慎重に丁寧に抱いたというのに…。
ともすれば、ほとばしる激情のまま、その身を貪りたい衝動を
ぐっと抑えつけて、我慢したというのに…。
何が不満だと言うのだ…
あなただって、あんなに悦んでいたではないか。
声をあげて、よがって、四肢をからみつけて、うわごとのように、
もっと、もっと、と…。
…あ…
ああ
そういうことですか…
すねたようにそっぽを向いて、横たわる彼の頬にそっと触れた。
「高耶さん」
「……」
目だけをじろりと、こちらへ向けた。
瞳の色は艶を帯び、こっちへ来いと誘っている。
気を遣ってバカを見た…
彼の額にくちづけを落とし、もう一度、シーツの海へと身を沈めた。
end.
2003.8.3.
甘々を目指してみたものの…
画面を閉じましょう