昼 臥
少しだけ――
痛々しいかな、と思った。
再会の熱狂は、午下りの戯れとはとても言えず、彼が自制を捨てて啼くまで追い上げて
しまった。
戸締りをしてくると耳元で囁いて、喘ぎに震える身体から離れるのは苦しかったが、家
の施錠と電話の始末をする間に、少し冷静になるのはどうしようもなくて――その目で、
乱れたベッドに腰掛けたこれも乱れた着衣のままの彼を見つめると、若いというより幼く
さえ見えて胸のどこかが痛んだ。
愛しさゆえだと言うのは簡単で、その情欲さえ正当化はたやすいけれど。
あなたの若さは時に痛々しくて胸にこたえる。
別の人生もあったのではないか――?
――別の出会いもあったのではないか?
崩れたはずの仮定が心に甦って重くなる。
重苦しい痛みは、甘美な自虐や獲得の喜びにもつながっているとは知りながら。
その視線の先で、あなたはゆっくりシャツを脱ぐ。
わずかにこちらへ上体を開いて、胸に散る紅い花弁を見せつけるように。
唇に不敵な笑みが浮かぶ。
まるで――俺ではない誰かがその身を抱き、狂ったように捧げた欲望の証を見せつける
ように。
わかっていて――煽られる。
あなたは犠牲者などではないし、未知の――広い先行きを持った無垢な若者でもなくて。
鋭い瞳と爪にかけられて捉えられているのは、こちらの方。
わかっているのだけれど。
あなたは床にシャツを落す。
こちらに目をあてたまま。
私は降伏し、扉を閉めて――ささやかな抵抗を思いつく。
そのまま部屋をつっきって、出窓を覆ったカーテンを開く。
初秋の彩りを見せはじめた雑木林しか見えるものはないけれど。
奥庭は地形ががくりと落ちこみ、窓の外に誰かが立つということも在り得ないけれど。
白い寝床は、外光で明るくなる。
あなたが驚きに目を見張り、さらされた素肌が愛撫のあとさえ呑みこむように赤く染ま
るのを見下ろして、ささやかな満足を口元に表す。
罵声をいただく前に、唇をふさぐ。
抗いが、やがて計算外の媚態に変わるまで。
了('03・2・24)